首曳きの唄/栗栖真理亜
 
を吐き出した。
小首をかしげながらも彼女は僕の言葉に耳を傾けようとまっすぐと僕の瞳を見つめた。
「なにかしら?」
その言葉に僕はさらに決意を固め、自分を制するように今までのいきさつを語り始めた。

「ありがとう。話してくれて」
話し終えて、僕が胸を押さえながら深く深呼吸していると、
小野寺先生が微妙な気持ちを押し隠すようににっこり微笑んだ。
「あ、い、いいえ」
僕もどう反応すればよいか判らずに、首を横に振った。
「こんなこと言ったら不謹慎かもしれないけど」
彼女は下を向いて、じっと自分の形の良いつめを見つめた。
それから何事を思ったのかまた顔を上げて、
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