首曳きの唄/栗栖真理亜
額に当てた。
「すみません・・・」
申し訳なくなって、僕は今にも消え入りそうな声で呟いた。
彼女はゆっくりと首を左右に振った。
「あなたはそんなことしんぱいしなくてもいいのよ。生徒なんだから」
(なぜそこまでしてくれるのだろう?)
僕はさらに彼女の顔をしげしげと見つめた。
とたんに彼女になら、この小野寺先生になら、何もかも打ち明けてもいいような気がしてきた。
「小野寺先生」
僕は思わず、彼女の名前を呼んでいた。
こんなことは初めてのことだ。
「なあに」
彼女が神々しいほどの微笑を僕に見せた。
「あの、話したいことが・・・」
僕は一気に言葉を吐
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