首曳きの唄/栗栖真理亜
 

すると、万里子の姿は忽然と姿を消し、代わりに彼女の担任教師が僕の手を優しく握っていた。
『さあ、近藤君還りましょ。ここは死後の世界よ』
僕はこっくりと頷くと彼女に導かれるまま光に向かって歩いて行った。

ゆっくりと瞼を開くと、ぼんやりと万里子の担任教師の顔が瞳に映った。
「気付いたのね」
よかった・・・とホッとした表情で彼女は胸を撫で下ろした。
暖かく柔らかい手で僕の手をさらにギュっと握り締める。
(ずっと握ってくれていたのか)
僕は彼女のほうに顔を向けるとじっと彼女を見つめた。
「また倒れちゃったのよ」
彼女は僕を安心させるかのように右手を僕の額に
[次のページ]
戻る   Point(1)