首曳きの唄/栗栖真理亜
僕も安心して瞼を閉じ、再び眠りに落ちた。
暗い闇が僕を覆う。
僕は必死に逃げようとして闇の中を必死に走り回る。
しかし、闇は僕を包み込んで放そうとはしなかった。
無様に手足をばたばたと動かしている姿はまるでバケツの中でひっくり返ってもがいているチッポケな虫にも似て、やがて僕は何もかも投げ出したくなって、走るのを止めた。
『けケケケケ。もう止めるのか?意気地なしめ』
宙に舞う垣ノ内の首がけたたましく嘲笑いながら僕を見下ろしている。
僕は何も聞かなかったかのように無言で後ろを振り向いた。
すると今度は、振り向いた先に渡辺万里子が立っていた。
『近藤君』
これ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)