首曳きの唄/栗栖真理亜
 
女が去った後、僕は黙り込んでまた天井を見上げる。
僕は女教師が口にした言葉を反芻していた。
あまりにも僕が毎日、不審な態度で教室をうろうろしていたものだから、教師のほうは、万里子との関係を疑い始めているようだった。
このままではバレてしまうだろう。
これからは、“僕は万里子とは関係ないんだ”といったさりげない態度をとらなければ・・・!
しかしあまりあからさまではいけない。
かえって変に思われてしまう。
どうすれば、この場を切り抜けられるだろう・・・?
僕は天井に残る茶色い染みを見つめながら、新しい策を練り続けた。
結局僕は何の手も打てずに日にちだけが過ぎていった。
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