首曳きの唄/栗栖真理亜
のうちに僕は首を横に振っていた。
「本当に?」
今度は縦に振る。
「そう、それならいいけど」
教師は疑い深い目で僕をチラッと見やると、そのまま、丸椅子から立ち上がり、扉をガラガラっと片手で半分ほど開けた。
「何か彼女の事で気が付いたことがあったら、誰でもいいから、先生に連絡してね。先生も渡辺さんの事がずっと心配だったから」
僕はコックリと眼で頷く。
「それからもうひとつ、このことは絶対に他言しないでね。判った?誰にも言っちゃダメよ」
振り返り際、優しくそう付け加えると、
教師は扉をピッチリと締めてから、保健室を出て行った。
「・・・・・・・・。」
彼女が
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