首曳きの唄/栗栖真理亜
 

「良かった。気が付いて」
声のするほうに首を傾けると、万里子の担任教師がほっと胸を撫で下ろしていた。
「いきなり倒れちゃったから、先生ビックリしたわ」
「ここは?」
まだ意識が朦朧としていて、現実が掴みきれない。
「ここは保健室よ。近藤君が倒れてすぐに運び込まれたの」
教師は「本当に心配したのよ」とちょっと困ったような顔をして、ズレ落ちた布団を掛け直してくれた。
(どうして、そこまでやってくれるんだろう・・・?)
何か意図があってそうしているのか、それとも・・・?
まじまじと見つめ返す僕に、教師はますます困惑した表情で話を変えた。
「先程ね、万里子さ
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