首曳きの唄/栗栖真理亜
だ。
僕は頭を抱え込んだ。
ザザッ!!
木の葉が揺れる。
僕は顔を上げた。
そこには、僕が片時も忘れずにいた渡辺万里子が、半ば放心状態で突っ立っていた。
「近藤君」
紅く柔らかい唇が僕の名を口ずさむ。
僕はその言葉に突き動かされるように、
いつの間にか動いていた。
彼女をその場で抱きしめる。
彼女の体は嫌に柔らかくて、グニャグニャしたコンニャクの様だった。
「一体どうしたんだ。心配したんだぞ」
耳元でささやいてみるが、彼女のほうは応えない。
何故か、無言のまま、僕にされるがままとなっている。
僕は不信に思って彼女の顔を覗いてみた。
彼女
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