首曳きの唄/栗栖真理亜
窓から顔を出した。
家から飛び出してきたりする者もあった。
僕は一刻も早く逃げ出したいが為に、そんなことに構っている暇もなく、住宅街が立ち並ぶ路地の隙間すきまをジグザグ走行しながら、逃げまくった。
「はあ、はあ、はあ」
僕は住宅の裏に逃げ込むと、誰も後ろに付いて来ていない事を確認してから壁際に身を潜めた。
(まさか、こんな事になるとは・・・)
行動が大胆すぎた。
もっと慎重に事を運ぶべきだったのだ。
しかし、もう後の祭り。
あのオバちゃんにバッチシ顔を見られてしまっているだろう。
(僕はなんてヘマをしたんだ・・・!!)
顔を知られてしまってはオシマイだ。
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