首曳きの唄/栗栖真理亜
まえられた腕はガッシリと頑丈に掴まれていて、なかなか抜けられそうにもなかった。
僕はうな垂れ、ちょっと悲壮そうな声で小さく呟いてみた。
「あの、おばさん、僕、ちょっと腕が痛いんで、掴むの、止めてくれます?」
しかし非情にもオバちゃんはさらに僕を追い立てて警察に連れて行こうとした。
「何だって!!そんなことしたらどうせ逃げる気でしょ?そうだ、そうに決まってる。グダグダ言ってないで、さあ、さっさと行った、行った!!」
「そんな事いったって、痛いものは痛いんです!!」
僕は食い下がらずに、今度は涙声になって訴えかけた。
すると、さすがにオバちゃんも哀れになったのか、スルッと手
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