首曳きの唄/栗栖真理亜
 
ちで見つめた。
(カサなど持ってくる余裕もなかったな)
何故なら、はやく生首の様子が知りたくて、カサなど持って来ようとも思わなかったからだ。
(まったく、一体誰が僕の“大切なもの”を・・・)
盗んだのだろう?
疑問は増えていくばかりで、僕の頭の中では、まるで終わらない音楽のように堂々巡りを続けている。
(しかし、これで次の獲物が見つかったのも同然だな)
早くその獲物を見つけなければなるまい。
逃げ出してどこかへ隠れてしまわないうちに。
問題はその獲物がどこにいるかだ。
(案外、近くにいるかもしれないな)
僕は視線を教室に移して、もう一度辺りを見渡した。
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