首曳きの唄/栗栖真理亜
シ〜〜ンと静まり返っていた。
僕は慎重な足取りでロッカールームのほうに歩み寄ると、以前(まえ)に生首が入っていたロッカールームの扉を開けた。
スチームの扉はなんなくこじ開けられ、ぽっかりとした四角い口を曝した。
僕はもう一度キョロキョロと辺りを見回すと、おもむろに取り出した黒いバッグを急いで四角い口に詰め込んで、バタンと扉を閉めた。
「ふぅ」
僕はやっと深い溜め息を心の底からつくことが出来た。
僕は強張った顔に不器用な笑みを浮かべると、ロッカールームに背を向けて、 入り口まで引き返した。
もう一度振り返る。
しかし、振り返った先にあるものは、外からの光でぼんやりと浮
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