首曳きの唄/栗栖真理亜
野寺という女の出現で、見事人生に裏切られてしまった。
今の僕は生きる屍だ。
人間として生きることはおろか、死ぬことすら赦されない。
こうなれば、あの女の破滅を祈るしかない。
僕はまぶたを閉じ、眼の奥に宿る業火の炎をじっと見つめた。
しかし、炎の舌に嘗め尽くされ、身を焼かれているのは、小野寺などではなく、まぎれもなく僕であった。
すると、炎に周りを取り囲み、僕の無残な姿を見て、笑い声を上げる人影もふたつ見えた。
「くくくく・・・・」
「ふふふふ・・・・」
「垣ノ内、万里子・・・・!!」
僕は思わず叫び声を上げていた。
見る見る間に笑い声は大きく反響してくる
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