首曳きの唄/栗栖真理亜
僕は牢屋に帰って来てからもショックで、しばらく何もかも分からないままじっと蹲っていた。
しばらくして、飯が運ばれてきたが、結局その場を動かず、メシにハエが集るのをじっと見つめていた。
壁と壁の間から警察官の声がこだまする。
『小野寺恵子の恋人だった菱田圭吾はな、小野寺からちょくちょく金を掠め取っては全部ギャンブルに積み込んでいたんだ。しかもヤミ金にまで手を出してたもんだから、借金も雪だるま式に膨らんで、その膨大な金額を返すために 、小野寺は夜のバイトで稼がなくてはいけなくなったそうだ』
僕は首を強く振る。
(嘘だ!!)
しかし、声は無情にもべらべらと喋り続ける。
『それ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)