首曳きの唄/栗栖真理亜
 
それでとうとう我慢しきれなくなったんだな。働いても、働いても、借金は増えて生活は苦しくなる一方。とうとう二人が同居していたマンションも、居辛くなって出て行かなければならなくなる。しかも引越し先のアパートでも毎日、取り立て屋が来ては騒ぎ立てる。とうとう差し押さえられて家具一式、持って行かれそうになったそうだ。それにも関わらず、肝心の婚約者はちっとも改心なんぞしようともせず、そればかりか小野寺に殴る蹴るの暴行を加えて平然としていたそうだ』
僕はおもむろに耳を塞いだ。
(あああああ!!聴きたくない!!)
アノ優しかった先生にそんな悲惨なプライベートがあったなんて。
どうして僕がそんなこと
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