首曳きの唄/栗栖真理亜
 
るの。今さら。ここまで来ておいて。さあ、行きましょう」
僕の腕を強引にグイグイと引っ張り、先生は何が何でも自首させる構えらしい。
男が行くと決めたからには行かなければならないのだろう。
しかし、僕はまだほんの少し迷っていた。
「先生も中まで付いて来てあげるから、大丈夫よ」
優しく背中をさすられ、僕は促されるままに車を降りる。
バタンッ。
ドアが閉められる音は、まるで断首台の鋸が振り下ろされた最期の音に似ていた。
僕は一歩一歩、足を踏みしめ、アスファルトの上を引き摺りながら、警察署の建物に近づいていった。
どっくん、どっくん。
僕の体を支えるように腕を絡ませ、
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