首曳きの唄/栗栖真理亜
 
うだ。
記憶を取り戻したときにはもう、車が警察署の前に乗り付けられていた。
「近藤君!近藤君!!」
僕は先生の声で眼を覚ました。
ハッとして、思わず逃げ出したくなったが、もう、後の祭りだ。
ここは覚悟を決めて行かなければならない。
ごきゅっ。
僕はつばを飲み込むと、緊張した面持ちで先生を見つめた。
先生も真剣な眼差しで僕を見つめ返してくる。
「行きましょう」
先生はエンジンキーを抜き取り、サイドドアを開くと、僕の腕を引っ張って催促した。
とうとうこの時が来たのだ。
「いやだ。行きたくない」
僕は消え入りそうな小さな声で呟く。
「何を言ってるの
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