首曳きの唄/栗栖真理亜
 
頭からすっ被っていた布団をずり下げると、痛む頭と闘いながら、何とか体を起こした。
「そう?でもまだ体の具合悪いんじゃない?近藤君。大丈夫なの?」
心配する先生を尻目に「はい」とだけ答えると、体を起こしたまま、右手で手すりに掴まり、ゆっくりとドアまで歩き出した。
先生がすかさず僕の体を支えて歩く手助けをしてくれる。
「本当に大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
しかし僕は痛みに耐え切れずに、頭を抱え込むようにして、その場で崩れ落ちた。
「近藤君!!」
真っ暗な闇の中で、先生の悲鳴に近い叫び声が聞こえ、僕の腕を強く引っ張る力も感じた。
それと同時に誰かの笑い声。

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