首曳きの唄/栗栖真理亜
 
本人が直接自首しに行ったほうが、罪も軽くなると思うし」と、思案げに頷いて見せた。
ぼくはほっと、胸を撫で下ろす。
「落ち着いてきたら、先生に言ってね。警察の前まで送ってあげるから」
先生は何とか僕を安心させようと優しい眼差しで僕を見つめた。
しかし、僕にとって、それは要らぬお節介だとしか思われなかった。
(この調子では上手く逃げ出すのは無理かもしれない)
ちぇッ。
思わず顔が歪み、心の中で舌打ちをした。
そんな僕の様子を見逃さず、優しかった先生の眼が突然、鋭く光った。
「逃れようったってダメよ。ちゃんとしたところで、ちゃんと罪を償いなさい」
「・・・はい」
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