首曳きの唄/栗栖真理亜
せようとエンジンをかけたその時、僕はふと奇妙な声を聞いたような気がして慌ててサイドミラーを覗き込んだ。
どこかできゃっきゃっと走り去っていく時によく聞かれるコドモ特有の叫び声がしたからだ。
まさか誰かに見られてしまったのだろうか?
しかしミラーのなかに反射されたものは人気のない鬱蒼と伸びた小道だけで、後はひっそりと静まり返っていた。
ブルッと身体を震わせると、何かの聞き間違いだと自分に言い聞かせるように思いっきりアクセルを踏んだ。
車は難なく前へと進み、不安を掻き立てるような暗いデコボコ道を走って行った。
次の日になっても例の事件は話題にも上らなかった。
朝八時のニ
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