柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
」
僕は必死になって、母親の言葉を打ち消すように叫んだ。
それでも尚食い下がろうとしない母親を無視してTVのリモコンを操作する。
母親はしばらく心配そうにこちらをじっと見つめていたが、やがて諦めたのか、台所のほうへ消えていった。
(折角わずらわしいことから逃れられて、ほっとしているのに・・・気分が台無しだ)
おかげで僕は今日一日を不愉快な思いで過ごさなければならなかった。
僕は夜にはっと目が覚めた。
こんな夜中に決まって起こる、何か悪い予感。
僕は途端に身を強張らせた。
いや、身を硬くする必要は無かった。
背中を這いずり回るような、何ともいえない、冷たい
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