柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
嫌がすこぶる良かったので一応うんうんと頷く。
「それから・・・」と母親が言葉を続ける。
「きちんと悩み事を話すこと」
僕は一瞬、息を詰めた。
(それはできない)
なんとなく母親には話してはいけないような気がしたのだ。
僕が黙り込むと母親は怪訝そうな顔をした。
「何か話しちゃいけないようなことでもあるの?何か悩み事があるんだったら話さなくちゃダメよ」
僕はギクッとして「そんなことない!」と慌てて手を振った。
「そう・・・?」と母親は疑わしそうな目を向けている。
「でもあなたあんなに機嫌悪く私達に・・・」
「だから!これは僕の問題だから僕が何とかするよ!」
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