柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
りを潜めてくれていたおかげで、 僕の不眠症もイライラも序々に回復の兆しを見せ始めていた。
「だいぶ調子が良くなってきたみたいね。一時はどうなることかと思ったけど」
母親がホッとした様子で話し掛けてきた。
「うん」
僕は嬉しそうに応えた。
正直、嬉しかったのだ。
こんなにぐっすりと眠れたことはない。
この平和な日々がいつまでも続けばと願わずにいられなかった。
「心配・・・かけてごめん」
僕が恐る恐る言うと、「そう思うんだったら、人に心配かけるようなことはしないこと。きちんと夜は寝ること。いい?」と彼女から説教が帰ってきた。
うるさいなあ・・・と思いつつ、機嫌が
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