柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
 
うに白い腕だけがにょっきりと伸びてきて僕の首をしっかりと掴んだ。
おかげで僕はすっかり不眠症になってしまった。
しかし、為すすべもないまま、不安な夜を過ごしていた。
ガンガンとテレビの音が鳴り、なにやら周りの話し声が騒がしく聞こえる。
僕はそれから身を庇うかのように椅子の上で体を抱え込んで俯いた。
体がだるい。
それもそのはずだ。最近まともにぐっすりと寝たことがないのだ。
体の節々が痛くて動くのさえ億劫になってしまう。
それなのに周りの者はそんな僕を怠け者と見なして何かとすぐ、手伝わせようとする。
だからつい、僕は不眠から来る苛立ちを相手にぶつけてしまうのだ。

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