柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
忘れてしまった。
仕方がないので今まで見てきた悪夢の事を話してやる。
みんな興味津々といった面持ちでじっと耳を傾けている。
「こうさ、いっつも夜中に女の手が俺の首を絞めるのさ。白くて柔らかい、いかにも女の手っていうカンジの綺麗な手がさ」
僕はついつい勢い付いて身振り手振りで話し込む。
それを聞いた母親の顔色が少し変わったのにも気付かずに。
僕が一段落ついたとき、母親がこう口を挟んできた。
「それってお母さんへのあてつけのつもりでしょう?」
僕は意味を良く飲み込めず、怪訝な顔つきをした。
「何言ってんだよ!そんなのじゃないよ」
「なら、いいけど」
それっき
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