柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
 
形で現れたのではないか?
何か位置付けが出来た時点で、今までの怯えから安心感へと心が動いていった。
(もう、原因不明のまま、何かに怯える必要は無い)
そう考えた時、再び眠りの世界へと誘われていった。

昨晩あんなことがあったにもかかわらず、朝は不思議と目覚めが良かった。
朝特有の少し冷たい風を頬に感じながらゆっくりとベッドから身を起こす。
気持ちのいい朝。
本当に朝が快く感じられる。
僕は大きくあくびをすると服を着替え始めた。
「おはよう」
僕の一言で応接間にいた家族が一斉に驚いた顔をこちらへ向ける。
その顔には一様に「どう謂う風の吹き回しだ?」と書か
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