柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
 
なビックリするようなことは止めなさいよ!分かったわね?」
真実を避けるようにおどおどしく説得にかかられても僕はもう騙されなかった。
もう疑い様も無い事実なのだから。
(やはり、あの手は・・・)
僕も思い出した。
幼い頃の記憶。
湯気が立ち込めるピンク色の浴室。
洗い場のスノコの上で僕と母親の二人だけがいた。
首に絡みつく母親の白い手。
徐々に締め付け窒息させようとする。
『やめて!ママ!苦しい!』
母親の能面のように無表情だった顔がはっと正気を取り戻して絞めていた手を放した。
『ごめんね、ごめんね。まあちゃん』
泣き叫び抱きつかれたとき触れ合う肌
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