柔らかき手の殺意/栗栖真理亜
 
う肌と肌の感触のなんと冷たい事だろう。
そうか。そうだったのだ。
母親はあの時僕を殺そうとして・・・。
ウソだと信じたい。
でも、これは100%ウソじゃない。
抗い様の無い事実。
「そんなに僕を殺したかったの?」
頬を伝え落ちる涙。
信じたかった。
信じたかった。
でももう遅い。
僕の心は今までよりももっと冷え込んでしまった。
「あの時はあなたがあまりにもわがままだったから」
「そう・・・・・」
母親がなにやら言い訳めいたことを言っているが、もうどうでもよかった。
殺さなければ殺されるまでだ。
明日からの安眠を守る為に僕は母親を永眠させよう。
僕はゆっくりと顔を上げると母親に最初で最後の微笑を浮かべた。                                                     了
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