夢人の恋/栗栖真理亜
 
い朝食を食べているときさえ、そのことばかり考えていた。
そして、それを終えると二階の畳の間にごろ寝してまた同じ事を頭の中で繰り返す。
彼は一体誰だったのか。
「あなたは誰?」
ポツリと呟く独り言。
しかし、それを返してくれる者はいない。
「隼人」
これはかの友人が自分の小説の登場人物に付けた名だ。
この小説の主人公が離れ離れになってしまった自分の思い人である隼人を恋焦がれるあまり、 思いつづける描写がある。
だが、主人公は自分を危険な境地から救ってくれたのはこの隼人ではなく、
自分の目の前にいるもっとも憎き男である事に気付くのだが。
私は今、見知らぬ男に
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