戸をたたくのはだれ?/栗栖真理亜
 

「なんだかもじゃもじゃでおまけに臭かった。」
「もうこんな思いは二度とゴメンだね。」と、子供達は口々に言いました。
子供達の元気な姿を見て、母親はほっと胸を撫で下ろしました。
さて、これからどうしよう、と母親は辺りを見回しました。
すると、すぐそこに子供の大きさほどの岩が五つ転がっていました。
お母さんと子供達は協力し合って、それを運び出し、男の腹に詰め込みました。
そしてすっかり疵を縫い合わせると、そろそろとお母さんと子供達は大きな岩場の陰へ隠れました。
日も暮れかける頃、ようやく男が目を覚ましました。
目覚めた時、男は急激に喉の渇きを覚え、水飲み場の方へと移動しました。
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