戸をたたくのはだれ?/栗栖真理亜
がぽかぽかと良く当たる草叢で横になって眠り込んでいました。
母親はそっと男に近づくと、これまた、そっと針と糸と鋏を取り出しました。
そうして、男のお腹を鋏でじょきじょき切りはじめました。
男はよく眠っているせいか、誰に何されてもいっこうに気付きません。
母親が切っていると、しばらくして、男の腹の中から青いものが見えて来ました。
それは末っ子の着ていた服と身体の一部でした。
またしばらくすると、今度は末っ子の身体全体が、次に頭が、足が見えて来ました。
すっかりそれを切り終わると、子供達が弾けるようにして外に出て来ました。
「ああ、恐かった。」
「中は真っ暗で何もみえなかったよ。」
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