遠幻の夢/栗栖真理亜
 
ている。
僕は怖くなり必死になって男性にしがみついた。
いつまで空を漂っていただろう。
やがて僕たちは地上に降り立った。
ざざっと叢が一斉に啓礼する。
僕は顔に直接ぶつかってくる風を手で遮りながら恐る恐る前を向いた。
目の前には信じられない風景が広がっていた。
一本の大樹が大地にしっかりと根を下ろし、
鮮やかな緑色の若葉をどこまでもどこまでも大空いっぱいに広げて僕たちを出迎えた。
大樹の根元にはこれも見たこともないほどに美しい黒髪の女性が白装束を纏い、立っていた。
僕は言葉で尽くせないほどの驚きと感動を憶え、しばらく呆然として突っ立っていると、 いつの間に傍へ来たのか、その女性
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