遠幻の夢/栗栖真理亜
 
どこから漂ってきているのだろう?)
不思議に思って薄く目を開けると不意に人のぬくもりが感じられた。
驚いた僕が顔を上げるとそこにはでっぷりと太った中年の男性が優しげな笑みを浮かべながら僕を見下ろしていた。
(あ・・・・・・・)
僕は唖然とした顔で相手を見つめ返すと慌てて彼の傍を離れた。
そんな僕の様子にいやな顔一つせず、むしろますますにっこりと微笑み掛けながら、男性は僕のほうへ手を差し伸べた。
「さあ、行きましょう」
「えっ?」
どこへ・・・?という僕の疑問が吐き出される前に男性は既に僕の腕を掴んでいた。
気がつくと僕は空を飛んでいた。
僕の足元には小さくなった大地が広がってい
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