遠浅の日々/霜天
 
やがて、それはゆっくりと始まる

誰も気付かない視点の高さ
から、夜は上昇していく
もう僕らは沈み込んでいる歩幅
もがくよりも深く落ち着いたリズム
呼吸はあちこちで燻っていて
平面に広げた両手は
あの赤い服の裾をつかむことも出来ないので
また、月に言い訳をする
それほどに、穏やかな、それは夜



あれを、凪、というのなら
そこら中で隙間に挟まって
僕らは少しずつ離れていくだろう


遠浅の日は曖昧な海岸線を手頃な棒で線引きすることから始まる


針の抜け落ちた時計が
かたかたかた、と音を立てます
潜るには少し足りないこの場所は
今日も地図に載ら
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