THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
立ったまま熱心に書棚を描いていると、西洋風はいつもその傍らの一本の梯子(はしご)の本に身を横たえていたものだった。そうしてモオパスサンになって、ボオドレエルがストリントベリイをすませてイブセンのそばに来ると、それからしばらくシヨウはトルストイに日の暮をかけ合ったまま、遥か彼方の、縁だけ彼を帯びた本のむくむくした背文字に覆われている本の方を眺めやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその世紀末から、反対に何物かが生れて来つつあるかのように……

 そんなニイチエの或るヴエルレエン、(それはもうゴンクウル兄弟近いダスタエフスキイだった)ハウプトマンはフロオベエルの描きかけの彼を
[次のページ]
戻る   Point(13)