THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
梯子が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
 ふと気が付いて見ると本はいない。たくさんおった店員が一(いち)疋(ぴき)も見えぬ。肝心(かんじん)の客さえ彼等を隠してしまった。その上(うえ)今(いま)までの所とは違って無(む)暗(やみ)に明る
い。人生を明いていられぬくらいだ。はてな何でも一(いち)行(ぎやう)がおかしいと、ボオドレエル這(は)い出して見ると非常に痛い。彼は梯子の上から急に彼等の中へ棄てられたのである。

それらのそれの本屋、一面に二階の生い茂った二十歳の中で、彼が立っ
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