金さんの最期/室町 礼
 
方なく外で飲もうということ
になってマンションを降りると前の路地で六十前
後のおばさんとすれ違いました。金さんがおいと
声をかけて肩に触れようとしたところ初老の女性
は嫌なものを見たようにさっとすり抜けて去って
いったものです。金さんの話では十数年ぶりに顔
を合わせたという。昔、二人で心中でもするかと
思い詰めた仲だったらしい。すがりついて来たの
は彼女のほうだったというのですが、なるほど金
さん、きっぷがいいから若い頃はかなりモテたら
しい。廃品を溢れるほど集めて近所から迷惑顔を
される老人になるとは夢にも思わなかったのだろ
うか、おばさんはすっかり目が覚めたといわんば
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