金さんの最期/室町 礼
 
韓国語に山形弁があるかどうか知らないのですが、
(たぶんないでしょうけど)金さんの人相風体は
伴淳三郎、通称"伴淳"と呼ばれた喜劇役者にそっ
くりでした。木枯らしに立つ枯れ木のようにひょ
うひょうとして、そのせいか、せかず急がず、と
つとつと、煙突からのぼる煙のように話す彼の声
がわたしには伴淳が話す山形弁のように聞こえた
ものでした。
当時わたしは大阪西成区あいりん地区にある三角
公園近くのニ階建和風一軒家に住んでいました。
孤児擁護施設を出て天涯孤独のつもりが、母方の
系図に資産家がいて、ある日突然、裁判所が指定
する弁護士事務所からの分厚い手紙を受
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