冬の思い出/山人
だった。
夜皆が寝静まると小便の近い私は便所に行くのだが、その便所は一階にあり、打ちっぱなしのコンクリート土間であった。昔便所の下は墓場だったという伝説があり、小便が終わると尿のしずくを垂れ流しながらダッシュして二階に駆け上った。私の寝床の傍に小さな窓があり、そこに雪が降らない日は月光がさしこみ、どこからか犬の鳴き声がしていた。
土曜になると開拓村から私たちの父兄が何人かでやってきて開拓村まで連れて帰った。約四キロの道のりを父兄たちはカンジキをつけて私たちを先導した。カンジキの無い私たちは、カンジキ跡を踏み外さぬよう気をつけながら歩くのだが、うっかり踏み外すと著しく埋まり、長靴の中に大量の
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