光、往路、/ 湯 煙
○豆腐
しかし。
まがいものにあふれたこんな世の目と鼻の先を一歩二歩三歩……とことこ歩いたすぐ横丁にあるスーパー。顔なじみの店員。
「いらっしゃい」
「どうも」
「いつもの?」
「うん…」
昨日も今日も、たくさんの商品にあふれ。そこに本物がまぎれている。数は少ないがそいつを見つけ、(おお!)
おもわず声を上げてしまう。
立ちすくんでしまう、のだ。
豆腐に醤油。
泥に混じる金の砂が輝く。
───あの道この道、とことこぽつぽつ、やってきた、
出会いの瞬間、ここにいる意味。
棚に律儀に並ぶもの言わぬ食品たちの顔、
貼り付けられたラベ
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