定めの夜/ホロウ・シカエルボク
が慌てたり腹を立てたり悲しんだりしているところを見たことがない、もっとも、俺はこの時間にしか来たことが無いからそんな彼を知らないだけなのかもしれない、とはいえ、習慣を壊してまでいつもと違う彼をみたいと思うような意欲も無い、そもそも、俺は彼の名前すら知らないのだ、ある日突然誰かと入れ替わったとしても、この席で同じものを頼んで、コーヒーでも飲んで帰るだけだ、この店に通うようになってから家の台所はただ水が出たり止まったりするだけの設備に成り果てた、別に良いことでも悪いことでも無い、ただ俺の生活がそういう風に変化したというだけのことだ、俺は日中食事をすることが無い、夜遅く、仕事が終わってからここで摂る食事
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