日記(血、生活、光、・・・)/由比良 倖
 
U-NEXTを開いて、何となく目に付いた『パリタクシー』という映画を見てた。人生に疲れ切って苛々しているタクシーの運転手と、これから老人ホームに向かう死にかけのお婆さんが、タクシーの中で会話をするという、それだけの話。
 本当に何となく見ていたんだけど、途中から何故か涙がぽろぽろ流れてきて、これは例えば本を読んでいるときに、読みながら全然泣かないのだけど、ひと休みして頁の合間に顔を埋めて、紙と活字の匂いを嗅いでいたら、内容が思い出のように溶け合って急に泣けてくるのと似ていて、フランスの作品だからかなあ、起承転結というより、香水の匂いの移り変わりのように淡くて、けれどしっかりした流れのある映画だと
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