「詩人キラー」新発売!/田中宏輔
ょうもまた
この詩人は
疲れた自分の身体といっしょに
送られてきたその何人もの詩人たちの身体を
自分の部屋のなかに運ばなければならなかった。
すると詩人たちは
部屋に入るなり
口々に自分たちの詩を
この詩人に読み聞かせるのだった。
この詩人が食事をしているときにも
この詩人が風呂に入っているときにも
この詩人が部屋の明かりを消して寝ようとしても
詩人たちは自分たちの詩を
つぎつぎと、この詩人の耳に読み聞かせるのだった。
この詩人は明かりをつけると
寝床から起き出して
洗面台の鏡の前に立った。
この詩人は自分の目の下のくまをみて
洗面台の
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