点の、ゴボゴボ。/田中宏輔
 
耳栓して寝ました。

四条河原町で、歩いてるひとたちの影を目で追いながら
なんてきれいなんやろうと思いながら
なんてきれいなんやろうと思っている自分がいるということと
なんてきれいなんやろうと思って歩いている人間って
いま、どれぐらいいるんやろうかなあって思った。
男の子も
女の子も
きれいな子はいっぱいいて
通り過ぎに
目がいっぱい合ったのだけれど
もう
そんな顔は
すぐに忘れてしまって
知っている顔
付き合っていた子の顔だけが
思い出された。
そうだ。
パウンドの『仮面』で
忘れられないかもしれない一行。
「きのう
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