大阪文学学校体験記/室町 礼
 
行ったことがある。恥ずかしながらそれまで詩
集を一冊も読んでなかったのだ。
詩関連の棚には谷川俊太郎の詩集ばかりが並べられて
いた。その一冊を手にとったわたしは飛び退いた。
あやうく詩集を落としそうになった。表紙一面に谷川
の顔写真がモノクロで印刷されており、その丸坊主の
顔が凶悪な殺人犯のようにしか見えなかったからだ。

わたしが大阪文学学校で結局仲良くなったのは、例の
意地悪な女が抱きつくようにしていた豊川悦司そっく
りのAだけだった。
Aはイケメンだけでなく自分で小さな会社も経営してお
り、またH氏や中也賞の候補にもあがるなど、詩壇で
はけっこうな中堅の書き手だった
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