もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
 
とれば、だれでも、病気になるんじゃないですか?」
「ほんとや。」
「こちら、はじめてですよね。」
マスターが湊くんに向かって
でも、ぼくが口を挟んで
「ぼくは、さっき
 違うと思ったけど
 はじめてみたい。
 で
 このひと
 詩人
 翻訳家
 大学の先生
 で
 俳句も書いてるのね。」
「翻訳って
 通訳もなさるのかしら?」
「通訳は(なんとか、かんとか〜、ここもまた忘れちゃった〜、ごめんなさい)」
「同時通訳って難しいんでしょ?」
とマスター。
「そうですね。
 5年が限度でしょうかね。」
ぼくはピンとき
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