もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
 
っと無機的でも、嫌になるんだろうけれど
 でも、ジェイムズ・メリルは、すごいよね。
 そのバランスがバツグンなんだよね。
 楽々とやっちゃうじゃない?
 余裕があるのね。
 ある意味、パウンドには余裕がなかったじゃない?
 まあ、ほんとは、あるんだろうけれど。
 詩をつくるという時点でね。
 無意識にでもね。
 悲しみを書くことで
 悲しみから離れるからね。
 喜びになっちゃうからね。
 でも、あの歴史的な悲劇
 第二次世界大戦というあの悲劇と
 パウンド自体が招いた悲劇のせいで
 余裕がないように見えるよね。
 メリルは、その点

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