もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
かも病気で動けなかったから
仕方なかったんやろうけど。
ああ
ぼくの最期は
どうなんやろ
いまもひとりやけど
そんときもひとりやろか
わからんけど。
湊くんの顔を見る。
湊くんは、いいなあ
恋人がいて
仲良くやってるみたいだし
じっさい、仲いいし
とかとか思った。
笑ってる。
焼鳥がおいしい。
ビールがおいしい。
話も盛り上がってる。
「手羽のほう
ぼくのね。
レバー
ぼく、食べられないから。」
「そうでしたね。」
あらたに、テーブルに置かれた6本の串。
間違うことはないだろうけど
間違われること
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