もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
ことはないだろうけれど
意地汚いぼくは
さっさと手羽を自分の取り皿の上に置いて確保した。
さっさと
そう
まるで
新しい恋人を
だれにも取られないように
自分の胸に抱き寄せる若い男のように。
だれも横取りしようなんてこと
思ってもいいひんっちゅうのに。
ってか
下手な比喩、使ったね。
ごめりんこ。
っていうか
オジンだけどね。
わっしゃあなあ、
あなたの顔をさわらせてほしいわ。
破顔。
戦争を純粋に楽しむための再教育プログラム。
ぼくは
金魚に生まれ変わった扇風機になる。
狒狒、
非存在たることに気づく。
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