喪失というものにかたちがあるとしたら/ホロウ・シカエルボク
 
かっていたかのように、俺はベッドを降りた、足元にスリッパが用意されていた、部屋の隅にはロッカーがあり、無難な感じのシャツとチノパンがあった、前に着ていたものは駄目になったのだろう、着てみるとサイズもぴったりだった、それから建物中を探したが誰一人見つけることは出来なかった、医師も看護師も患者も居なかった、確かに病院としての設備は整っていたが、あらゆる機器は長いこと使われたことがないのを語るように埃にまみれていた、率直に言ってそれは打ち捨てられた病院の廃墟だった、俺は茫然と狭いロビーに立って受付を見た、受付は床が脆くなっているのか、棚が倒壊していて人が入れる状態ではなかった、なんとなく、早く出て行きな
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